夫婦の日常と こころの中のこと
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小雨の降る夜明けであった。辺りが明らかになるころには、雨は上がっていた。灰色の雲の垂れ込める朝。
寒い。そろそろヒーターを出さねばと思う。
朝方、頭痛の予兆あり。片頭痛かもしれない。そんな気もした。そうでない気もした。
出勤中の車の中で、目の前がちらちらしだした。片頭痛だと自己診断を下し、職場に着くなりイミグラン服用。軽快。間に合ってよかった。
仕事は順調。真面目に勤務しているし、今のところ将来にはっきりした不安はない。
仕事のやりがいは感じる暇もないが、ふとしたふれあいに心癒されることもある。
家庭はほぼうまくいっていると認識している。妻の言い分を聞いたわけではないが、表情や俺に対する態度から推測するに、明らかな不満はないのではないかと思う。
子供は可愛い。健康で、親の欲目ながら賢く、申し分のない娘である。もう一人生まれれば万々歳であるのは勿論だが、今のままでも充分俺に力を与えてくれている。
やがて家も完成するだろう。新築の広い家に住む日も近い。借金を抱えるが、経済的に不安になる額でもない。
なのに、何なのだろう? この空虚な気持ちは。
自分のつまらなさ、くだらなさばかりに思いが行く。誰しもが自分よりも格段に優れているように思う。
他人からは贅沢な悩みだと批判されるのだろうが、俺はその贅沢な悩みにとらわれている自分を恥じるばかりである。
指の間から自らの命を粒と落として、分け与え、仕事を続けているように思う。そしてまた、この仕事に意味はあるのか、と考えずにはいられない。
かつて母は、就職したばかりの若い俺に忠告してくれた。そんな仕事は忌むべき仕事で、後生の成り難い仕事である、と。若い俺は、不浄な仕事に敢えて就くことの尊さを思ったけれど、母の言葉はそのままの意味だったのかと思える。
続ければ続けるほど、自問の苦しみに迷っていく。まさに忌むべき仕事である、と。
謎めいた言葉の意味を尋ねてみたいが、当の母ももうない。
みんなどうやって折り合いをつけ、或いは割り切って、日々を送っているのだろう。
仕事に意味を見出すのか。
家族の為にと思い切るのか。
刹那刹那の楽しみに憂さを晴らし、明日に臨むのだろうか。
生きることは辛いことと観念するのだろうか。
真っ暗な夜に、生き難さについて想う。
寒い。そろそろヒーターを出さねばと思う。
朝方、頭痛の予兆あり。片頭痛かもしれない。そんな気もした。そうでない気もした。
出勤中の車の中で、目の前がちらちらしだした。片頭痛だと自己診断を下し、職場に着くなりイミグラン服用。軽快。間に合ってよかった。
仕事は順調。真面目に勤務しているし、今のところ将来にはっきりした不安はない。
仕事のやりがいは感じる暇もないが、ふとしたふれあいに心癒されることもある。
家庭はほぼうまくいっていると認識している。妻の言い分を聞いたわけではないが、表情や俺に対する態度から推測するに、明らかな不満はないのではないかと思う。
子供は可愛い。健康で、親の欲目ながら賢く、申し分のない娘である。もう一人生まれれば万々歳であるのは勿論だが、今のままでも充分俺に力を与えてくれている。
やがて家も完成するだろう。新築の広い家に住む日も近い。借金を抱えるが、経済的に不安になる額でもない。
なのに、何なのだろう? この空虚な気持ちは。
自分のつまらなさ、くだらなさばかりに思いが行く。誰しもが自分よりも格段に優れているように思う。
他人からは贅沢な悩みだと批判されるのだろうが、俺はその贅沢な悩みにとらわれている自分を恥じるばかりである。
指の間から自らの命を粒と落として、分け与え、仕事を続けているように思う。そしてまた、この仕事に意味はあるのか、と考えずにはいられない。
かつて母は、就職したばかりの若い俺に忠告してくれた。そんな仕事は忌むべき仕事で、後生の成り難い仕事である、と。若い俺は、不浄な仕事に敢えて就くことの尊さを思ったけれど、母の言葉はそのままの意味だったのかと思える。
続ければ続けるほど、自問の苦しみに迷っていく。まさに忌むべき仕事である、と。
謎めいた言葉の意味を尋ねてみたいが、当の母ももうない。
みんなどうやって折り合いをつけ、或いは割り切って、日々を送っているのだろう。
仕事に意味を見出すのか。
家族の為にと思い切るのか。
刹那刹那の楽しみに憂さを晴らし、明日に臨むのだろうか。
生きることは辛いことと観念するのだろうか。
真っ暗な夜に、生き難さについて想う。
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