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夫婦の日常と こころの中のこと
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仕事から帰ると、妻子がおらんかった。

娘のおもちゃなどが散らかったまま、夕食の後片付けの途中のままの、生活観の残った様子で、人員だけが消えていた。まるで神隠しだ。
焦る。
携帯の着信を見ても、妻からのものはない。
ダイニング・テーブルの上、台所、居間の、どこを探しても、書置きひとつなかった。
非常に焦る。
ったくよー、どこ行った?と、少々イライラしながら、携帯電話を握り締め、固定電話の前にどっかと鎮座して、電話の鳴るのを待つ。
電話はない。
随分待っていたようだが、わずかも経っていなかっただろう。次第に不安になってきた。
もしかして・・・また俺妻に捨てられたのかしらん?

こういうとき、前歴があるのは辛い。ものすごい速さで、妻に捨てられたときの苦悩がよみがえってきた。
しかし、前回の件とは夫婦の状況はまるっきり違う。
それに今だって、俺は何も悪いことはしておらん。
内緒で莫大な借金をこさえたこともない。
他の女の人とセックスをしたこともない。
妻や子を殴ったこともない。暴言もないと思う。

悩みぬいて、宇宙人にでも誘拐されたのであろうか、とあほなことを思い、空虚な笑いを漏らした。
彼女らは、それほど忽然と姿を消していた。


23時ごろ、固定電話へ妻からかかってきた。
病院からであった。いい知らせとばかりは言えないところからだ。
娘が転倒し、顎に裂傷を受けたとのことであった。救急病院で治療を受けたのだ、という。
傷は2センチほどであったが、ぱっくり口をあいており、深かったそうだ。

出血と、娘の泣き叫ぶ様子に動転して、とるものもとりあえず、病院に走ったのだろう。妻の興奮した話し振りから容易に推測できた。
俺は安堵した。
「書置きのひとつでも置いてけよ」となじろうと思っていたが、そんな気も失せてしまった。むしろ、危難のおりにすら在宅しておらぬ、自分の帰宅の遅さが不甲斐なく思えてきた。すまないなあ、と感じた。


帰ってきた妻から、怪我をしたときの様子などを聞いた。
「血がどばーーーっと出てー」とか
「(娘)ちゃんは震えながら泣いててー」とか
「バスタオルが血まみれになっちゃってー」とか、延々と聞かされた。
妻の興奮は覚めやらぬようであった。
娘に「痛かったね。怖かったね」と話しかけたら、つぶらな瞳で「シジツ(手術)したの」と答えた。
そして、「寝るー」と言って自分の布団にすぐもぐりこんだ。痛々しかった。
傷の様子をみたかったが、やめておいた。

娘が寝た後もまた、妻の顛末話は続いた。
よりにもよって高次の救急病院に行ったものだから、時間はかかった。おまけに教育指定施設だったものだから、処置は研修医で介助は医学生だったそうだ。
処置が拙いということはない、と思う。
しかし、待たされたことと、病院スタッフの肩書きが、妻には不満不安なようだった。同じ病院にかからねばならんか、と嫌そうに言う。
言い渡された、翌日の形成外科受診はせず近くの外科に掛かれば充分だ、と助言しておいた。

非常に疲れた夜であった。
終わりよければ全てよし、か。全くよいわけでもないけれど。
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